月別アーカイブ: 1997年3月

Punto Vol.2 試乗記

(1998年11月21日 訂正)


(ご注意)
このページは過去の履歴として設置しており、原則として更新は行いません。
記載内容やURIなど、記事は作成時点のものであり、現状と異なっていたりリンクが切れているものがある可能性があります。


 やっと正規輸入が始まったPuntoです。早速試乗してきました。あくまでもちょい乗りですけど、私が思ったことを書きつづってみましょう。なお、今回はいわゆる「好き者」な人(私も含めて)の視点からではなく、カタギの人(爆笑)の視点から見てみました。



・これは私が試乗したPuntoです。

 横浜のG某なる店にて。ALFA155の奥に赤いやつの姿も・

  Punto Selecta

Picture Copyright Inagaki,Shiro





 現在、正規輸入されるているのは、5doorのSelectaとカブリオレのCablio Selectaの2種類です。どちらも1241cc、60psのエンジン、ミッションはECVTです。実は私、CVT初体験だったりします。ジゥジアーロのペンによるボディは、写真でみたよりもずっと立体感のあるデザインでした。

 *まずは乗り込んでみます*

 センスのいい色・柄のシートに座ってみると明るいグレーの大胆ながらセンスのいいデザインのインパネが広がります。ハイトアジャスタ付きのシートを調整すると私の座高をもってしても天井に頭が付かず、ポジションは良好です。シートは例によっていかにもFiatという「柔らかいんだけど、腰がある」絶妙のシートです。ライト、ウィンカ、ルームランプ、空調のスイッチ類は、妙に渋かったりぶらぶらだったりせず、はっきりとしたクリックがあって(!)日本車並のクオリティでちょっとびっくりです。
 ただ、大枠のデザインや部品の良さに反して、建てつけは・・・というともう一歩のところもあります。助手席エアバッグの取り付け部とか、トリムの合わせ目とかの隙間の処理はちょっとクオリティを低く見せるのが残念です。まぁ、イタ車好きにとってはどうでもいいことですし、Fiat自身、気にしていないんでしょう。ただ、今回のPunto Selectaって、「好き者」が買う車ではないと思うんですね。一般の、「ちょっと毛色の変わったモノ」が欲しい人(この「ちょっと」がミソです)にアピールしないといけないと思うんです。我が日本は、各部の建てつけに(異常に)配慮された車が周りに氾濫している国ですから、それらと比べちゃうとちょっとねぇ・という印象を与えるのはマイナスでしょう。インパネの色をもう少し暗いグレーにすれば結構印象が違うと思うんですがね。(隙間なんかが目立たなくなりますから)


 うちのTipoと記念写真。お尻ですみません


  Punto Selecta and my Tipo
Picture Copyright Inagaki,Shiro




 *走りましょうか*

 エンジンをかける・と思ったよりも静か。アイドリングでは、ホントにエンジン回っているんでしょうかって感じです。で、ちょっと固くて引っかかるシフトをDレンジに入れて走り出します。
重いスロットルを踏み、走り出す・とこれまたいかにもFiatのFF車!。ごろごろごろごろ・といううなりを上げながら加速していくといつのまにかビィーンと軽快に回るこの感じは、Pandaも、Cinqechento(現行)も、Unoも、Tipoも同じですね。進歩がないのか何なのか・(笑)いつのまにか笑みを浮かべながら走っている自分に、信号待ちで隣の車のドライバと目があって気づいてなんだか赤面状態になるこの感じ。Tipoを買ってすぐの頃に嬉しくて走り回っていたときと同じ気分が味わえて嬉しいもんです。自動車の作りとしては決して正しいとは断言できないフィーリングなんですけど、ハマってしまうとたまらないんです。(私だけかなぁ)
 CVTはというと、すでにいくつかの雑誌などの記事で紹介されているとおり、スロットルを踏んでいくと、まずは回転が上がっていき、続けて加速しながらなのになぜか回転が下がっていく感覚は独特ですが、これはあえて気にしなければ気にならないのではないかな、と思います。
 ステアリングは・軽い。軽すぎる。駐車場や路地なんかでの取り回しはいいでしょうけど、ステアリングからのインフォメーションは少な目なのが残念です。もう少し重めにしてでもしっかりとしたステアリング・フィールを確保して欲しいものです。


“Punto Sporting Abarth”の名前で輸入されている(1998~)3door版ですね。オーナになられた方、レポートをいただけませんか?(笑)



  Punto 3door.

Picture Copyright “Fiat’s official Web site”

http://www.fiat.com/





 Puntoは、私の予想通り、基本設計のしっかりした出来のいい車でした。でも、私には疑問に思うことがあります。それは、投入されたグレードについてです。
 Cablioはともかく、前述のようにSelectaの方は、「好き者」向けの車ではありません。それは解っていたはずです。右ハンドル/AT(ECVT)という構成からもそれはうかがえます。サミットモータースの崩壊以来、「隙間商品」しか扱ってこなかったFiat Autoにしては大英断だと思います。しかし、今回のSelectaって残念ながら非常に中途半端なグレードになってしまっていると思うんです。例えば、VW Poloは1.6Lのエンジン、4ATでカラード・バンパーを備え、見た目にもそこそこの高級感をもっていて179万円、Opel Vitaは最上級のスポーツでも166万円。対してPunto Selectaは188.5万円。バンパーは黒いまま(注・1997年9月頃から、バンパーはボディ同色になって、プント・セレクタ・コローレという名称で販売しているようです)だし、この値段なのにエンジンは1.2Lにすぎない・言っちゃ悪いがビンボ臭いのに高価いのです。これでは一般の人にアピールできないんではないかと。せめてこのグレードならば150~160万円で販売して欲しい、と思います(Pandaの値段を無視していますが・FF版で145~155万円)がどうでしょうかね。

Mercedez-Benz SLKについて


(ご注意)
このページは過去の履歴として設置しており、原則として更新は行いません。
記載内容やURIなど、記事は作成時点のものであり、現状と異なっていたりリンクが切れているものがある可能性があります。


 「Fiatについての話題」で850Spiderのエッセイを投稿していただいた静岡の沼倉さんから手紙をいただきました。124SpiderからPandaに乗り換えてすっかりちびイタ車の世界にどっぷりかと思っていたら・こんな手紙でした。そのままご紹介しましょう。






Mercedez-Benz SLK

Picture Copyright ” Mercedez-Benz Japan”

http://www.mercedes-benz.co.jp/





 稲垣君。ここしばらく便りをしなかったが、元気だろうか。ここ静岡では、先日、毎年開催される輸入車ショーに行ってきたので、その中で印象に残ったことを、いささか書き送ろうと思う。

 知っての通り、私は、先頃、愛用の124 Spider と別れ、パンダに乗る身となったのだけれど、長年体になじんだオープンエアの味が忘れられなくてね。折しも、最近の欧州車には、どれも魅力的なスパイダーが多く、その中でも、メルセデスベンツSLKに関してはとても興味津々というわけで、重い腰を上げる気になったというわけだ。

 稲垣君にいまさらこんなことをいうのは釈迦に説法かもしれんが、SLK は、メルセデスベンツの設計陣の優秀性を、あらためて世に示すマスターピースとなることは疑いない。

 古き良き時代の300SLR から取ったモチーフの、ボンネットの二つのバルジ。軽快で、しかもメルセデスらしさを失わないスタイリング。リア・バルクヘッドにはチタン合金を、さらにルーフ部材にはジュラルミンをふんだんに使い、あの大きな屋根が入るにしては、極めて要領よく納まり、トランクスペースは最低限の犠牲に留まっている。閉めたときには、屋根を力一杯押えても、ミシリとも言わない緻密さを持ち、しかもそれが、1.2t 台の車重と、4m 以下の全長に納っているのだからね。

 ”沼倉さん、相当気に入ってるな。”と笑う君の顔が見えるようだよ。だがね。これには続きがある。私は、君に、”買うか”と問われたら、条件付で、”ノー”だ。条件というのは、

 ”あのクルマがヒットして、街中に珍しくないくらい増え、1回か、2回ほどマイナーチェンジをして、飽きられたころには買うかもしれない”ということなんだ。その訳はね、

 私は現車を前に、じっくりとエクステリアを見分して、やおら、フロントのホイールアーチの中に手を入れてみたのさ。その瞬間、おや?と思ったのだよ。知ってのとおり、SLK は、Cクラスのシャシーを使う関係上、ホイールベース内側はほぼCクラスそのままで、オーバハング部分のみSLK独自のフレームを持っている。

 その継目が、まるで木に竹を継いだようなぞんざいな接合だったのさ。また、インナーフェンダは普通、ホイールアーチに沿った形に整形されたプラスチック部品を使うものだが、それが、あたかも平板を曲げただけのような、なげやりな形状となっていた。また、フロントサスのA アームも、いかにも安く作ったような単純化された形態じゃないか。これは..と思って見直すと、トランクリッドのヒンジなども、薄肉鋼鈑を打抜いて作成された、強度に疑問をもたざるを得ないようなもの。

 ”これは、私の知っているメルセデスではない”と、思い知らされたね。私が使っている190E と比べれば、その差は歴然だ。190は、一見同じように打抜きの鋼鈑でできたステーでも、強度を出すためにフランジ状に曲げ加工がなされていたり、シャシーの接合部分も、入念な接合部の整形を行った上で溶接されていたりする、あの完璧主義は、もう見られない。考えられる原因はただひとつ。コストさ。

 もちろん、メルセデスの設計陣は大変優秀なので、これらの点は知っていてやったことだろう。500万円前後での市販を考えたときに、原価の点で目をつぶったのだろう。メルセデスも、おりこうさんになったって訳だ。ただね、SLK は、恐らく、相応のヒット作となりえるだろうから、量産効果で原価が低減され、あの優秀な設計陣に、コストの制約をゆるめた設計変更の機会がきっと訪れることと思う。

 その時には、奴らも、再び気の利いた工作技術を使えるようになると思いたいね。


Mercedez-Benz SLK

Picture Copyright ” Mercedez-Benz Home page”
http://www.mercedes-benz.co.jp/





** 沼倉さんのお手紙についてのInagakiの返事 **

 お手紙ありがとうございます。沼倉さん、気に入っているでしょう・SLK。

 よく言われる通り、SLKに前後して、いや、現行Eクラスの登場からメルセデスの車作りの方向が変わってきたのは間違いないでしょうね。「これは、私(沼倉さんのこと・注)の知っているメルセデスではない」というのを読んで、私は190のデビューの頃を思い出しました。今でこそちょっとクラシックな雰囲気を醸し出しているあのボディですが、今にして思うと登場時には当時最先端だった、「空力ボディ」に対するひとつの解釈であったと思います。

 私が「メルセデス・ベンツ」というものを知った1970年代ですけど、そのころのスタイルに比べてどうです?190とか、先代のSクラスは。実際、デビューした頃にはアクが強いスタイルのせいか、非常に抵抗があったのを覚えています。

 たぶん、メルセデス・ベンツの開発者たちは190デビューの頃にやったような大きな変化を、昨今また狙っているのではないでしょうか。190の頃に空力、スピードに重きをおくことにしていったのと同様に何か重きをおくことを変えてきているのではないかと思います。それが「何か」というのは正直、いまのところ私は見えていませんけれどね。Aクラスはじめとする新しい発想の小型車なんかもその一つでしょうけど。つまり、メルセデスの作りが安っぽくなったというのは彼らが他の方向を向き始めた(コスト低減によって見るからに頑丈な作りとかですね)からだとおもうのは、肩を持ちすぎですか?確かに、昨今の「変化」はちょっと理解しにくいものだと思いますけど(少なくとも私には)

 私の仮説が正しければ、ですけど、沼倉さんの言われる「コストの制約をゆるめた設計変更の機会」は残念ながらないんじゃないかと私は思うんですね。作りが安っぽくなっても、それで浮いた分のコストは彼らがいま考えていることに重点的に使われるのだろうなぁと。ちょっと寂しいような気はしますけどね。

 でも、彼らが考えているコンセプトがだんだん我々の理解できるレベルまで熟成されてきてはじめて「作りの変化」をとらえることができるんではないかと思うんですけど。それがはっきり見えてくると改めて尊敬に値することを再確認させられると思いますね。骨のある車をずっと作り続けているメーカですから。メルセデス・ベンツって。それまでにはカスも作るかもしれないけど。